<スーダン>1万人規模のPKO 国連が安保理に勧告 2月1日15時9分 (毎日新聞)
【ニューヨーク高橋弘司】国連のアナン事務総長は31日、スーダン南部の内戦で停戦監視や国連要員の警護などに当たる平和維持活動(PKO)要員の派遣を勧告する報告書を安全保障理事会に提出した。2月中にもPKO派遣に向けた決議案が安保理で承認される見通しだ。
報告書はスーダン政府と反政府勢力・スーダン人民解放軍(SPLA)が21年間にわたり計200万人の犠牲者を生んだ内戦の終結で合意、1月9日に包括和平協定に調印したことを「スーダン史上の転換点」と歓迎。その上で、加盟各国から派遣された兵士、国連要員警護部隊、文民警察官などからなる計1万130人規模のPKO要員派遣を勧告するとしている。
報告書はまた、PKO要員派遣に向け、国連事務局が加盟各国と協議を続けてきたにもかかわらず「ごく限られた国からの打診しかない」として各国にさらなる派遣を促している。日本はスーダンPKO活動への自衛隊派遣の検討を開始している。
■ふむ、スーダンPKOですか。
我が政府の反応は・・・?
自衛隊のスーダンPKO派遣、国際的な状況みて判断=官房長官 2月1日11時38分 (ロイター)
[東京 1日 ロイター] 細田官房長官は、閣議後の記者会見で、スーダン内戦の終結を受けての国連平和維持活動(PKO)に政府が自衛隊を派遣するとの報道に関連し、「まだ検討していない」としながらも、「国際的にもこれから様々な形で検討されると思うし、その中での日本政府の検討というのは、国際的な状況をみたうえで判断と考えている」と述べた。また、「停戦合意の環境などよく吟味しなければならない」とした。
一方、イラク・バグダッド北西で1月30日、英空軍輸送機が墜落、最大15人が死亡したと伝えられていることについて、「英軍機がどのような形で墜落したのか、(英政府は報道の内容の)真偽を検討すると思う」とした。
自衛隊が派遣されているイラク南部のサマワは、3月末でオランダ軍が撤退し、その後は英軍部隊が駐留することになっているが、「(自衛隊の)安全に配慮し、様々な対応とるのは当然だ」と語った。
スーダンPKO参加検討へ 自衛隊派遣で町村外相 2月1日11時2分 (共同通信)
町村信孝外相は1日午前の記者会見で、スーダンで近く展開される見通しの国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣について「国連からそういう話が来ているのは事実。関係省庁とこれから検討していく」と述べ、防衛庁などと参加の可否を含めて検討する考えを示した。
外相は政府内での検討状況を「まだ本格検討というところまでには行っていない。これから議論を始める」と説明。国連平和維持軍(PKF)本体業務への参加の可能性についても「まだ、そんな議論になっていない」と述べた。
大野功統防衛庁長官も、同日の記者会見で「前向きに考えたいが、具体的にどういうことを期待しているのか、(自衛隊の活動として)ふさわしいかどうか聞いてみないと分からない」と述べ、国連の要請内容を見極めた上で参加を検討する考えを示した。
■まぁ、総じて官僚的答弁とも言えなく無いですが慎重姿勢ですね。
しかしこう言った報道があるようで・・・
<スーダン>PKO検討 「常任理入り」視野に 政府 2月1日3時2分 (毎日新聞)
政府がスーダンの南北内戦終結を受けた国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣する検討に入ったのは、国連安保理常任理事国入りを目指す国として「さらなる国際貢献の姿勢を示す」(外務省幹部)という意味合いが大きい。政府開発援助(ODA)予算が減額される現状では、貢献をアピールするにはPKOが最も効果的な手段という判断だ。しかし、スーダンの治安情勢への不安などから、政府内にはなお慎重論が根強い。【高塚保、古本陽荘】
政府関係者は「ODAとPKOが常任理事国入りに向けた『2大障害』となりかねない状況で、何らかの方策が必要だと考えてきた」と明かす。
ODAをめぐっては、国連事務総長の諮問委員会が1月17日、常任理事国入りを目指す国は15年までに国民総生産(GNP)比0・7%にするように提言した。日本の現状はGNP比0・2%で、政府は「今の倍以上を出すのは大変なこと」(谷川秀善副外相)と受け止めており、ODAでのアピールは難しいのが実情だ。
現在、PKOに参加しているのは自衛隊員30人で、人数からみれば世界70位。派遣隊員に国連から償還金が供与される途上国とは単純比較できないが、日本と同様に常任理事国入りを目指すドイツは計296人を出しており、外務省を中心に人数の底上げが必要との考えが強まった。PKOへの積極参加でODAの「不足分」を補う狙いだ。
一方、国連が近年、アフリカ地域での活動を重視しているほか、今年7月に英グレンイーグルズで開かれる主要国首脳会議(サミット)ではアフリカ支援が主要議題になることが固まっている。このため、日本政府としてアフリカの問題に積極的に関与する必要があるとの判断が働いている側面もある。
しかし、防衛庁内には(1)国連平和維持軍(PKF)本隊業務に初めて踏み切る可能性が高い(2)西部ダルフール紛争は継続している――などから、「法律的には派遣は可能だが、治安情勢がはっきりしないと実際に出せるかどうかは判断できない」(幹部)との意見が根強い。また、感染症のまん延、インフラ未整備に悩まされたルワンダでの国際救援活動の経験から、同庁にはアフリカへの派遣には異論も多く、別の幹部は「遠いスーダンへの派遣は国民の共感が得にくい」と指摘している。
■常任理事国入りへの人身御供ですか・・・?
PKO参加は70人と言いますが、イラク派遣も
国連安保理決議に基づく多国籍軍への参加だったはずですが・・・
え~このブログを読んで居られる方の中には
「あれ?某S氏は自衛隊の海外派遣に賛成だったはずなのに・・・」と思われる方も居られると思いますが、説明の前にこちらの記事からどうぞ。
<スーダン>PKOに自衛隊 PKF本体業務、初めて実施も 2月1日6時57分 (毎日新聞)
政府は31日、スーダンの南北内戦の終結を受け、近く同国南部で展開される見通しの国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣する検討を始めた。PKOは停戦監視と武装解除が中心となる見通しで、自衛隊が01年12月のPKO協力法改正で凍結が解除された国連平和維持軍(PKF)本体業務を初めて実施することになる可能性が高い。こうした事情を抱えながらも検討着手に踏み切ったのは、国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本にとってPKOへの積極参加が不可欠との判断がある。
スーダンでは南北内戦、西部ダルフール紛争という二つの紛争が続いてきた。このうち南北内戦は1月9日、スーダン政府と反政府勢力「スーダン人民解放軍」(SPLA)が包括和平協定に調印。これを受け、国連安保理は現地でのPKOを検討中で、2月中にも最終決定される方向となっている。
政府は3月にスーダンに調査団を派遣し、どのような活動が可能かを具体的に確認する方針。PKF本体業務の初実施の可能性に加え、和平協定にはダルフール紛争は含まれておらず、スーダン国内でもダルフール地方では依然として戦闘が続いていることから、自衛隊員の安全確保が今後の焦点になりそうだ。
国連改革をめぐっては、アナン事務総長が設立した「ハイレベル委員会」が昨年12月に提出した報告書で、安保理メンバーを選出する際には(1)国連分担金(2)任意拠出金(3)PKOへの参加――の3分野で地域のトップ3に入っている国を優先的に考慮すべきだと提起している。
日本は分担金と拠出金ではアジアのトップだが、PKOは現在、ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に30人が参加しているだけ。このため政府内に「PKOの参加人員増を急ぐ必要がある」との考えが強まった。【高塚保】
【ことば】PKOとPKF PKO(国連平和維持活動)は、国連安保理決議に基づき、国連が武力紛争再発防止のために行う活動。紛争当事者間の停戦合意や受け入れ同意が必要で、停戦監視や選挙監視、復興援助などを行う。PKF(国連平和維持軍)は、各国軍隊などで構成するPKOの組織を指す。PKFの活動は本体業務(停戦・武装解除等監視など)と後方支援業務(輸送、建設など)に分けられる。本体業務は軍事的性格が強く、政府は当初、実施を凍結し後方支援に限ってきた。01年12月のPKO協力法改正で、本体業務の凍結を解除し武器使用基準も緩和した。しかし本体業務に必要とされる「任務遂行のための武器使用」までは認めていない。
■結論から言えば
PKF本体業務については「任務遂行のための武器使用」を認めない限りPKF本体業務には参加すべきではないと考えています。
ここで言う
PKF本体業務とは
PKO協力法第3条第3号イからヘまでに掲げる業務及びこれらの業務に類するものとして同号レの政令で定める業務・・・と言ってもさっぱり分かりませんねw
と言う事で、図でどうぞ。
平成12年版防衛白書
国際平和協力業務の仕組みなど
(第4-11図)国際平和協力業務のうち自衛隊の部隊などが行う業務
より
縮小していますので見づらいと思います。
画像をクリックすると原寸大になります。
抜き出すと
PKF本体業務
1)武力紛争の停止の遵守状況、軍隊の再配置、撤退、武装解除の監視
2)緩衝地帯などにおける駐留、巡回
3)武器の搬入・搬出の検査、確認
4)放棄された武器の収集、保管、処分
5)紛争当事者が行う停戦線などの境界線の設定の援助
6)紛争当事者間の捕虜交換の援助
PKF後方支援業務
7)医療
8)輸送、通信、建設
など本体業務を支援するなどの業務
となります。
で、まず根本的なPKOとPKFについて書くと
・
国連平和維持活動(Peace-Keeping Operations=PKO)
国連安保理決議に基づき、国連が武力紛争再発防止のために行う活動
・
国連平和維持軍(Peace-Keeping Forces=PKF)
各国軍隊などで構成する国連平和維持活動の組織
となります。
PKO活動は全て
紛争当事国や対立する当事者の同意の下にと言う大前提がありますが分類すると以下の3種類になります。
・原則的に非武装の軍人で構成される軍事監視団による停戦監視
・国連によって組織された平和維持軍(PKF)による停戦監視・兵力引き離し
・文民(選挙監視要員、文民警察官など)による選挙監視、人権監視、復興開発、組織・制度構築などの行政的支援活動
我が国の場合は同じ「PKF」でも武装部隊を伴う停戦監視・兵力引き離しの場合は「国連平和維持軍」と訳し、同じPKFでも原則的に非武装の軍人で構成される停戦監視団による停戦監視の場合は「国連平和維持隊」と訳すようですがまぁ本質的な変わりはないと見ていいでしょう。
この辺りは色々とややこしいのでツッコミが来ないうちに本題へw
で、今回のスーダンPKOは停戦監視と武装解除が中心となる見通しとの事ですから自衛隊が派遣されるならばほぼ間違いなく担当業務は「PKF本体業務」でしょう。
しかし、2001年12月のPKO協力法改正で本体業務の凍結を解除し武器使用基準も緩和しましたが、本体業務に必要とされる
「任務遂行のための武器使用」までは認めていません。
改正前のPKO協力法では武器の使用(第24条)による防衛の対象は「
自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員」とされ、他国のPKO要員や国連職員等は含まれていませんでした。
それを緩和して
改正前
自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命又は身体を防衛するため
改正後
自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するため
と、進歩したように見えますが武器使用限度は
「やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度」とされたままであり、同法24条6項には
>第一項から第三項までの規定による小型武器又は武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。
とされたままで、相も変わらず同法では
「正当防衛」「緊急避難」以外の発砲は認められていません。
これでは
PKF本体業務など夢のまた夢と言うもの、こんな武器使用基準でPKFに派遣するのは
政治の怠慢と言うものです。
参考リンク
・
スーダン問題について(極東ブログ)
・
国際平和協力本部事務局
・
PKO協力法の一部を改正する法律案要綱(平成13年12月改正)
・
PKO協力法の一部を改正する法律案新旧対照条文(平成13年12月改正)