東南アジアから見たイラク派遣=竹之内満(アジア総局) 2004/12/10 (毎日新聞)
自衛隊車両の前で笑顔を見せるサマワの子ども=今年9月
◇変わる自衛隊への認識--活動実績踏まえ評価
「自衛隊のイラク派遣をめぐる日本国内の議論は透明性がある。日本政府は繰り返し派遣目的を復興支援と説明しており、事実、サマワの活動はその通りだ。なぜ東南アジアの国々が、自衛隊を警戒する必要があるのか」
最近、タイ海軍幹部がこう語るのを聞き、東南アジアにおける自衛隊への認識が変わりつつあると感じた。
実際、イラク開戦後、この地域から「自衛隊派遣反対」の声はほとんど聞こえてこない。理由は、02年の東ティモール平和維持活動(PKO)派遣をはじめ、カンボジア、シリア・ゴラン高原など、10年以上にわたり自衛隊が実績を積み上げてきた結果と、私は素直に評価したい。
外から見る日本の国会は「非戦闘地域」といった言葉の定義づけをめぐり、1年前も現在も、出口のない議論を延々と続けているように見える。時にはアジア諸国の“抵抗感”が、派遣反対論の補強に使われることもある。
しかし第二次大戦時、日本軍が甚大な被害を与えた東南アジアでさえ、自衛隊の効果的な貢献を求めている、というのが偽らざる実感である。
東南アジア側が変化したのには、理由がある。端的に言えば、「テロとの対決」だ。世界最大のイスラム教国インドネシアは、02年10月のバリ島爆弾テロ以降、イスラム過激派ジェマー・イスラミア(JI)のテロに悩む。フィリピンの分離主義グループも活発だ。タイ南部ではここ数年、国軍基地襲撃などイスラム系住民による暴動が絶えない。カンボジアに約100万人暮らすムスリム社会は、国際テロ組織への武器・資金経由地と疑われ、監視と取り締まりの対象だ。
(中略)
9・11米同時多発テロが、各国政府の対テロ強硬姿勢を後押ししているのは明らかだ。それは何もブッシュ米政権への追従ではない。東南アジアのリーダーたちは、治安ばかりか政権維持のため米国による「外圧」を利用しながら、その一方で「テロリストを野放しにしている」という米国の批判をテロ対策実績で排除しようとしている。
この地域の治安確保に中央情報局(CIA)、麻薬取締局(DEA)など米捜査当局の協力が不可欠なのは事実だ。しかし各国政府とも、独自の治安政策をいかに確保するか、腐心している。だからこそ
03年のASEAN首脳会議で、テロなど国境を越える犯罪に地域で対処する「安全保障共同体構想」(インドネシア提案)が出てくる。さらにASEANは、米国と並ぶもう一つの軸として中国、日本を重視している。「重し」はいくつあっても良い、と考えるからだ。自衛隊イラク派遣を好意的に受け止める姿勢は、その延長線上にある。
タイ首相の安全保障顧問を務めるチュラロンコン大学のパニタン助教授はこう語る。
「自衛隊派遣は、日本が国際社会でより大きな役割を果たすため、対米協調が最善策と判断したことの表れだ。ASEANにとって日本は、ドイツのように米国と仲たがいしない方が好ましい」
このような立場の背景には昨年2月、海上自衛隊の輸送艦がタイ軍兵のアフガニスタン移送を担当したように
、自衛隊は東南アジアの助力となる、との現実的な計算もあるだろう。自衛隊を見つめる東南アジア各国の視線は、確実に変わっている。
イラク南部サマワでは、治安維持を担当するオランダ軍が来年3月に撤退する。自衛隊の活動は今後、代替の部隊確保が前提となる。その上で、派遣延長にあたって真に議論すべきは、この1年間の総括とこれから「何をなすべきか」という展望である。
今、イラク駐留の自衛隊が求められているのは、下水道施設の本格整備といった地域の雇用創出につながる施策の実施だと思う。現地の実情に合わせ、支援・復興内容の「次元」を引き上げるべきだ。
欧米列強のはざまで、戦火から復興の道を歩んできた東南アジア諸国は、イラクでの自衛隊の活動ぶりを注目している。
■いや、毎日新聞がここまで素直な記事を書けるものかと感心しましたが、何よりも
>実際、イラク開戦後、この地域から「自衛隊派遣反対」の声はほとんど聞こえてこない。
>理由は、02年の東ティモール平和維持活動(PKO)派遣をはじめ、カンボジア、シリア・ゴラン高原など、10年以上にわたり自衛隊が実績を積み上げてきた結果と、私は素直に評価したい。
この言葉は一国民として非常に嬉しい。
自衛官の皆さんが一部国内の心ない罵詈雑言に耐え、現場で必死にニースに答えようと汗を流した結果がアジア諸国の揺るぎない信頼に繋がったと言う事は本当に素晴らしい事だと思う。
不言実行の日本人がまだ居たんだなぁと、我々は彼らのような日本人を誇りに思うべきなんじゃないかなとも思いますね。
詳しくは「
自衛隊ではなく海上保安庁を派遣すべき???」をご覧下さい。